2018年 
紡木(つむき)プロジェクト
2018年 
紡木(つむき)プロジェクト

六本木ヒルズの一角に、木材流通の拠点として材木商が多く住んでいた「麻布材木町」という町がありました。つむぐプロジェクトの初年度はこの歴史を足がかりにしながら、街にゆかりのあ35名のコアメンバー、そして建築家・松野由夏、林敬庸と共にこの街について知って欲しいことや伝えたいことなどのアイディアを出し合うことに。山車のような木組みの構造を母体に、「ふるさと、未来、夢」について来街者の思いを集める録音装置を組み込んだ移動型アートプロジェクトの構想が生まれました。この参加型作品は「六本木ヒルズ春まつり2018」、「六本木アートナイト2018」など街で開催されるイベントで展示されました。プロジェクト参加者によって吹き込まれた声が文字情報として記憶され、最終的に機械音に変換されることで、都市を象徴するかのごとく不特定多数の声として街の中に放たれ、サウンド・インスターレーション「紡木(つむき)プロジェクト」が完成しました。

Photo:Tayama Tatsuyuki
制作ノート
定期的な活動を通じて、アート的な思考を織り交ぜながらアイディアを出し合う議論をコンセプトに落とし込み、そしてプロジェクト具体化に向けたグランドデザインの構想と並走しながら、実際に形にしていく制作作業を行った。制作はオープンデイと位置づけ、週末に開催し、その際は、コアメンバー以外で、このアートプロジェクトに関心がある方々が参加できるような機会を作った。 スタート時は仮称だったプロジェクト名も議論の末、メンバー自ら「紡木(つむき)プロジェクト」と名付け、様々な声を束ねていく装置として移動式インスタレーションの構想が誕生した。それは4つの要素から構成され、
1. 母体となるのが、滑車のついた土台に、みんなで刻んだ大小300を超える日本の伝統工法の木組みのパーツを組み上げた構造。木材は、構造を作るための手段ではなく、木は思いのメタファーであり、自らの手で木を組むという行為が、この街の歴史に関連させた自分たちのストーリーを紡ぐという意味につながる。関わる人が違えば、作品自体の意味にも影響する。
2. その内側には、偏光板を通してのみ見ることができ、コアメンバーが持ち寄ったこの地域コミュニティを象徴する写真を編集した走馬灯のような映像
3. 「ふるさと、未来、夢」をテーマにした3つの問いかけに答えるための声の録音装置
4. そして、その吹き込まれた声が文字情報として記憶され、最終的に機械音に変換されることで、都市を象徴するかのごとく、不特定多数の声として街の中に放たれるサウンド・インスターレーション。
という内容を盛り込むべく、計画を進めていった。 このプロジェクトは、イベントなどで、公開展示する作品づくりがゴールではなく、あくまでも公の場を活用し、この活動を体験することで、伝えたいメッセージ・コンセプトの理解を深める機会と考える。 「六本木ヒルズ春まつり2018」、「六本木アートナイト2018」では、「紡木プロジェクト」がきっかけとなり、多くの方々に参加していただくことを常に意識しながらプロジェクトは進んで行った。コアメンバーが中心となり、このプロジェクトに込めた思いを語り、対話をしながら、人と人とのつながりを丁寧に構築する。この、体験から生まれる地道なプロセスが、コミュニティ・エンゲイジメントを主軸とした活動の醍醐味でもある。自らが精魂込めて作り上げた活動だからこそ、自分の言葉で話ができる。 最終的にできあがったもの(=対話の装置)が、きっかけとなり、本来伝えたいことを伝える機会が生まれる。
●「六本木アートナイト2018」https://www.roppongiartnight.com/2018/
Photo1,2,3,6:Tayama Tatsuyuki  
Photo4,5:Furukawa Yuya
アーカイブ映像
紡木プロジェクト

ーメイキングムービー総集編ー

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協力 松野由夏(建築家・設計士)

建築士事務所「株式会社みかんぐみ」を経て2013年独立。独立後は設計業務の他、全国各地で土地の文脈を生かした建築、プロジェクトに携わる。京都造形芸術大学非常勤講師(2014-2017)。2017年、株式会社メゾン一級建築士事務所を設立。

協力 林 敬庸(建築家・大工)

90年以上にわたり神社、仏閣、住宅などの建築物を造り続ける家業を引き継ぎ、その3代目として 20年の経験を持つ。日本の木造建築技術や文化を後世に伝えるために、国内各地でワークショップ、まちづくりの活動、デジタル建築なども手がける。

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