Interview
過去と未来を踏まえた
新しい提案になっているか、
そんなモノに惹かれます。
- “デザイン哲学を感じるタイムレスな小物”というテーマで六本木ヒルズのショップの中からアイテムを選んでいただきましたが、そもそもムラカミさんは日頃どのようなデザイン哲学を持ってお仕事されているのでしょうか?
- ムラカミ(以下M):ファッション、ビューティー、都市開発など様々なプロジェクトに携わっていますが、共通して「欲望とどう向き合うか」から考えることが多いです。欲望は時代と共に変わり続ける非常に扱いが難しいもので、且つ、個人欲や社会欲、クライアントの欲望を満たさない限り仕事としても成り立たない。特にコロナ禍以降は、世界中で経済が伸び悩んでいるし、環境問題も深刻ですから、欲望を単に拡張するのではなく、“バックキャスティング(未来からいまを見る視点)”を元に、あるべき未来の方向に軸足を向けられるか、テクノロジーやコミュニティの成長性や可変性を踏まえて、如何に無駄なく完成させすぎないか、ということに気を配っています。
- “未来でも機能するデザイン=タイムレスなデザイン”だと思いますが、ムラカミさんにとってその定義とは何でしょうか?
- M : 過去と未来が折り重なって続いていくもの、だと思います。どちらかだけだと物足りないし、事足りない。何より時代に残るようなデザイン強度も高まらない。これまで築かれてきた人類の文化的研鑽を踏まえつつ、これからの生活を踏まえた新しい提案になっているか、というところかな。自分の手がけるプロジェクトでは過去の膨大な情報を徹底的に掘り下げて、これから起こりうる時代のムードや社会の要請をシンプルに表現することを意識しています。スタイリングだけでなく、文脈的な厚みのあるデザインに惹かれますし、今回ピックアップしたアイテムもそんな魅力があるものを選びました。